松戸拘置支所 2010年03月05日(金) 09時10分

 
「ていうか、明日帰るんなら、今日来た意味なかったかな・・・」
「ん? それもいいじゃねえか 拘置所に来る機会もないだろうしよ 社会見学だ」
「はぁ・・・ なんか急に疲れてきた・・・」
「お、なんだ? 俺のことそんなに心配だった?」
「そりゃそうですよ 拘置所にいるって言われたり、パソコンに変な・・・・・・あ! 忘れてた!」
「なんだなんだ?」
「あの『遺言』って、なんなんすか!?」
「・・・遺言・・・・・・」
「なんで遺言なんて書いたんすか!?」
「・・・見たのか」
「・・・・・・はい」
「そうか・・・」
「・・・・・・」
「・・・恥ずかしい・・・・・・」
「・・・はぁ?」
「いや、けっこうマジで書いちゃってるしさ 生きてるうちに見られるなんて、思ってなかったからな」
「カズさん・・・ ハッキリ聞きますけど、死ぬつもりだったんですか?」
「あ? 自殺ってこと?」
「そうですよ」
「自殺なんて、するわけねえだろ」
「じゃあ、なんであんな・・・」
「成義くん、自殺の前に書くのは、遺書だ」
「・・・え?」
「俺が書いたのは遺書じゃなくて、遺言 自殺とか関係ないほうのやつな」
「え・・・ 遺書じゃなくて・・・・・・」
「あー、それで心配してたのか 遺書と遺言まちがえるとか、成義くんもとんだ天然さんだな! うはははは!」
「え、でも・・・ 遺言にしても、普通そんなの書かないじゃないですか なんで死んだ後のことなんて・・・」
「それは、あれだ 永六輔が『遺言を書いとくといいよ』って言ってたから」
「ロクスケ?」
「小6のときに聞いてな、それ以来ずっと毎年書いてんのよ」
「小学生から!? 遺言を!?」
「成義くんも書いといたほうがいいぞ 人間、いつ死ぬかわからないからな」
「はぁ・・・ また疲れが出てきた・・・・・・」
「あ、そうだ 成義くんに聞きたいことがあったんだよ」
「・・・・・・なんすか・・・」
「田中っちのラジオが終わったって、マジ?」
「・・・はぁ・・・・・・」