松戸拘置支所 2010年03月05日(金) 09時00分

 
「こんばんうっひー!」
「・・・・・・」
「こんにちわんわんわんわん!」
「・・・・・・」
「おいおい〜 成義くん、もっとテンション上げていこうぜ〜」
「こういうときって・・・なんて言ったらいいか・・・・・・」
「え・・・ そんなショックだった?」
「それはまぁ・・・さすがに」
「そっかー そりゃそうだよな いい大人が野グソだもんな」
「いや、野グソにショック受けたんじゃなくて、ここに居ることがですよ」
「あ、そうなの」
「・・・話はだいたい徹さんから聞きました」
「え、なに? 徹に会ったの?」
「はい」
「俺のこと、なんか言ってた?」
「え、べつに・・・」
「うそーん」
「・・・あ、カズさんとこれからも仲良くしてやってくれって言われました」
「なんだよそれ なんか気持ち悪い」
「カズさんは、えーと、なんだっけな・・・ シャー?みたいな純粋な人だからって」
「え、俺、フェンシングとか乗馬とかやったことねえんだけどな・・・ ていうか『シャー』じゃなくて『シャア』な」
「で、徹さんは、その、大ごとにはならないだろうって言ってたんですけど・・・ 実際はどうなんですか?」
「あー もう終わったよ」
「終わった?」
「AV嬢が『わたし拉致されたわけじゃありません』って警察に話したから、もう終わり」
「え、なに? 拉致って?」
「あれ、聞いてないの? 車にAV嬢を無理やり連れこむ撮影してたら、それを見た近所のおばちゃんが『女性が拉致された!』って通報しちゃって、それで容疑がかかってたわけよ」
「どういうロケやってんすか・・・」
「というわけで、明日帰るから」
「明日? 今日じゃないんですか?」
「もう1泊させてくれって言ったら、いいよって言われた」
「なにその気ままな一人旅みたいな感じ・・・ “1泊”って言っちゃってるし」
「いや、あそこに立ってる警官さ、能登さんのヲタなんだよ」
「マジで!」
「おう、マジマジ そんでさ、こんど能登さんと静岡のホビーショー行くツアーがあるらしくてな、それ一緒に行かないか?って盛り上がっちゃってよ」
「すっかり楽しんでたんですね」
「あ、明日9時ね」
「え?」
「迎えに来てくれるんじゃないの?」
「いや・・・ 朝からバイトだからムリっす」
「おいおいおい! こんな滅多にないチャンス、棒にふる気か!?」
「チャンス?」
「俺が出てきたところで『おつとめご苦労さまです』って言えるんだぞ? そんなの人生で1回あるかないかじゃねえか!」
「いいですよ、そんなの ・・・チャンスっていうより汚点って感じだし 人生の汚点」
「あー、つまらん若者よの 同じ新成人でも重さんとは大違いだな」